17世紀英国の官僚ピープス、その日記が語る激動の時代と人間模様
官僚ピープス氏の生活と意見:日記が映す歴史の断面
17世紀英国、王政復古、ペスト、ロンドン大火、英蘭戦争――激動の時代を生きた一人の官僚がいた。彼の名はサミュエル・ピープス。その名を聞けば、まず思い浮かぶのは彼の詳細な『日記』だろう。
しかし、岡照雄著『官僚ピープス氏の生活と意見』は、単なる日記の紹介にとどまらない。ピープスの実務能力に優れた海軍官僚としての顔、そして抑えがたい欲望と好奇心に満ちた自由人としての側面を、日記の行間から鮮やかに浮かび上がらせる。
歴史のうねりと個人の選択
ピープスの日記には、日々の些細な出来事から国家の意思決定に関わる重大な局面までが記録されている。岡氏は、これらの記述を通して、「小事」と「大事」の交錯を読み解き、歴史の転換点における個人の役割を描き出す。
暗号と欲望、そして官僚のリアル
ピープスは日記を暗号で記し、そこには女性関係や賄賂の受け取りといった、官僚としての倫理を揺るがす記述もある。だが岡氏は、それらを単なるスキャンダルとしてではなく、時代の価値観と制度の中で生きる人間のリアルな姿として捉える。
読む者を歴史の現場へ
本書は、歴史を知識としてではなく、物語として体感させる力作だ。ピープスの視点を通して、読者は17世紀英国の政治、宗教、戦争、そして日常の息遣いに触れることができる。
『官僚ピープス氏の生活と意見』は、歴史と文学、そして人間理解の交差点に立つ読者にこそ手に取ってほしい一冊である。
官僚の一生
# 書籍情報
- ISBN: 9784622077749
- 著者: 岡照雄
- 出版社: みすず書房
- 出版年月: 2013年06月
- サイズ: 254P, 20cm
- ジャンル: 文芸 > 文芸評論 (文芸評論(海外))
- タイトル: カンリヨウピ-プスシノセイカツトイケン
- 登録日: 2013/06/05
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